<前回のあらすじ>
やりたいことを叶える、
来てはいけない場所で立ち尽くし…それでも聞こえた、父の声
「やりたいことを叶える。」ただ、それだけを願っていたはずなのに、気づけば私は、決して足を踏み入れてはならない場所に一人、佇んでいました。
もう、何もできない。
失った自信はあまりにも大きく、私を深くむしばみ、苦しい現実だけが容赦なく押し寄せてきます。こんな自分が、心底嫌になっていました。
仕事を増やし始めた頃から、家族との時間は明らかに減っていきました。ただ、最低限の家事だけをこなしていれば、私の存在意義などないのではないか。そんな寂しい気持ちが、日に日に募っていきました。
自分には極力お金を使えない。今までささやかな楽しみだったビールさえもやめ、自分のための出費は極限まで抑えました。トイレの水を流すことさえ申し訳なく感じ、電気の使用を極力控え、買い物は値引きされたものばかりを選ぶ。そんな生活を続けるうちに、自分の存在そのものが疎ましくなっていくのを感じました。
子供たちも、もう私がいなくても大丈夫だろう。むしろ、私が生きていることで余計な経済的負担をかけてしまうのではないか。いっそのこと、いなくなってしまえば…。そんな考えが、何度も何度も頭をよぎりました。
お母さん、天国からこんな私を見て、きっと怒っているだろうな……。
マイナスなことばかりが頭の中を駆け巡り、生きる意欲さえも失いかけていたのです。
そんな時、一人暮らしをしている父から「動けなくなった」という突然の連絡を受けました。救急で病院に連れて行き告げられたのは、脳の血管が詰まってしまったということでした。
忙しさを理由に、すっかり実家への足は遠のき、父の生活を気遣うことさえできていなかった自分を、深く後悔しました。
病院のベッドで、父は弱々しい声で私にこう言ったのです。
「よかった、りかちゃんがいなければお父さん死んでたかもしれん。ありがとうね、助かったよ。りかちゃんがお父さんの娘で良かった。」
父の言葉が、私の胸に突き刺さりました。心が痛くて、痛くて、涙をこらえるのに必死でした。こんなにも情けない私でも、必要としてくれる人がいるんだ……。そう思うと、堰を切ったように涙が溢れそうになりました。
そして、障害のある一つ上の姉の顔が頭に浮かびました。もし私がいなくなったら、姉はどうなってしまうのだろう。私は自分のことしか見えていなかった。ただ、苦しい現実から逃げ出したかっただけだったのだと、改めて深い後悔の念に襲われました。
今、逃げることよりも、今できることをしよう。
心の奥底から、そんな思いが湧き上がってきました。私の、再出発への模索が、ようやく始まったのです――。
次回、「再び灯る希望の光、そして見つけ始めた自分の役割」にご期待ください。
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